領収書に貼る印紙は、書き方を変えるだけで減ることがある。消費税額を分けて書けば、記載金額は本体価格になるからだ。
同じ20件の領収書で試した。税込の金額だけ書くと印紙税の合計が12,200円、消費税を分けて書くと8,000円。4,200円の差が出る。20件のうち11件で税額が変わり、2件は非課税になった。
以下の取り扱いは、2026年9月21日に国税庁のタックスアンサーと質疑応答事例で確かめた。計算はMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で行った。個別の判断は所轄の税務署に確認してほしい。
消費税を分けて書くと、記載金額が変わる
国税庁のページによると、この扱いが使えるのは3種類の文書だ。第1号文書の不動産の譲渡等に関する契約書、第2号文書の請負に関する契約書、そして第17号文書の金銭または有価証券の受取書になる。
明らかになる書き方は2つある。消費税額等が区分記載されているとき、または税込価格および税抜価格が記載されていることにより、その取引に当たって課されるべき消費税額等が明らかとなる場合だ。
国税庁が挙げている例がこれだ。商品販売代金48,000円、消費税額等4,800円、合計52,800円と書いた領収書は、4,800円を記載金額に含めない。記載金額は48,000円になり、5万円未満なので非課税になる。
通らない書き方も示されている。消費税額等10パーセントを含む、とだけ書いた場合や、請負金額1,100万円(税込)と書いた場合は、全額が記載金額になる。
税率だけ書いても足りない。金額を書く。
5万円の線がいちばん効く
第17号文書は、5万円未満が非課税だ。ここをまたぐかどうかで0円と200円が分かれる。
金額の段階は決まっている。5万円以上100万円以下で200円、100万円超200万円以下で400円、200万円超300万円以下で600円、300万円超500万円以下で1千円、500万円超1千万円以下で2千円。そこから先も段階が続き、10億円超で20万円になる。
受取金額の記載のないものは200円だ。金額を書かなければ安くなるわけではない。
手元の20件で、いちばん差が出たのは4,800,000円の領収書だった。税込にすると5,280,000円で500万円を超えるので2千円、本体価格なら1千円で済む。1件で1千円違う。
Excelで判定する
段階の表を別シートに置いて、VLOOKUPの近似一致で引く。
記載金額: =IF(消費税を分けて書く,本体価格,税込金額)
印紙税: =VLOOKUP(記載金額,表!$A:$B,2,TRUE)
表は2列でいい。A列に記載金額の下限、B列に税額を入れる。0と0、50000と200、1000000と400、というように並べる。下限で並べておけば、TRUEの近似一致がその区分を拾う。
FALSEにしてはいけない。完全一致になるので、表にない金額で#N/Aが出る。段階の表を引くときはTRUEが正しい。
20件にかけると、書き方ごとの合計がそのまま出る。月の領収書を全部入れれば、年間でいくら変わるかが分かる。
電子のままなら課税文書にならない
紙にしなければ、そもそも印紙が要らない。
国税庁の質疑応答事例には、電磁的記録は課税文書に当たらないという趣旨の説明がある。印紙税は文書に課される税で、電磁的記録は印紙税法上の文書に含まれないからだ。
別の事例では、電磁的記録の内容が変更契約書に引用されていても、その電子契約の内容が変更契約書に記載されているものとして判断することはできない、と書かれている。
注意するのは、電子で作ったものを印刷して相手に渡した場合だ。渡した紙が文書になる。電子で送って相手が印刷する分には、こちらが作成した文書にはならない。
契約書を電子にすると印紙代が消える。契約の件数が多い職場では、この差が大きい。契約そのものの期限管理は契約の自動更新の記事に書いた。
契約書でも同じことが起きる
この扱いは領収書だけの話ではない。第1号文書の不動産の譲渡等に関する契約書と、第2号文書の請負に関する契約書にも同じように使える。
請負契約書で3件計算した。本体980,000円なら、区分記載で200円、税込1,078,000円で書くと400円。本体1,950,000円なら、区分記載で400円、税込2,145,000円だと1千円になる。3件の差の合計は800円だった。
本体2,900,000円の契約は、区分しても税込でも1千円で変わらなかった。段階の境目をまたがなければ差は出ない。だから全部の契約で得をするわけではない。
金額の大きい契約ほど、1つの段階の幅が広くなる。境目に近い金額の契約だけが効く。契約書の金額を決める段階で、段階の表を見ておくと判断できる。
見積書の段階から本体価格と消費税を分けて書いておけば、契約書に転記するときに迷わない。見積が税込だけだと、契約書も税込だけになりやすい。
変更契約書のときに気をつけること
金額を変える契約書にも印紙が要る。もとの契約が電子でも、変更契約書を紙で作れば、その紙が文書になる。
国税庁の質疑応答事例には、変更契約書に電磁的記録の内容を引用する旨の記載があっても、印紙税法上、電磁的記録は文書に含まれないため、引用されている電子契約の内容は変更契約書に記載されているものとして判断することはできない、という趣旨の説明がある。
つまり、電子契約を引用しただけでは、その金額が変更契約書の記載金額になるわけではない。変更契約書そのものに何が書かれているかで判定する。
もとの契約を電子にしたなら、変更契約書も電子で作る。片方だけ紙にすると、そこで印紙が要ることになる。
営業に関しないものは非課税
第17号文書にはもう1つ非課税の枠がある。国税庁のページには、営業に関しないものは非課税となりますと書かれている。公益法人や商人以外の個人による受取書がこれに当たる。
つまり、個人が自分の持ち物を売ったときの領収書には印紙が要らない。会社が営業として出す領収書とは扱いが違う。
第17号文書に当たるものの範囲も広い。受取書、領収証、レシートのほか、請求書や納品書に代済などと記入したものも含まれると書かれている。請求書に受領印を押して返すやり方は、それ自体が受取書になる。
運用に落とす3つ
金額を書く欄を3行にする。本体価格、消費税額、合計の3つを必ず埋める形にしておけば、書き方で迷わない。
領収書の様式を作り直すのがいちばん確実だ。合計だけを書く欄しかない様式を使っていると、毎回手で書き足すことになり、忘れる。
5万円に近い金額は、本体価格で判定することを社内で共有する。税込52,800円の領収書に印紙を貼っている人がいたら、その分は要らない。
電子で済ませられる書類を洗い出す。契約書、注文請書、領収書。相手が紙を求めるかどうかで決まるので、取引先ごとに確かめる。
踏んだ失敗
税込の合計だけを書いた領収書に、印紙を貼り続けていた。5万円を少し超える金額が多い取引先で、本体価格なら非課税だった。1年で数千円だが、様式を直せば済む話だった。
VLOOKUPの4つ目をFALSEにしていたこともある。表にある金額ちょうどのときしか引けず、#N/Aだらけになった。段階の表は近似一致で引く。
消費税額等10%を含む、と書けば区分記載になると思っていた。国税庁のページに、この書き方では全額が記載金額になると明記されている。金額を書かないと通らない。
電子契約に切り替えたのに、控えを印刷して相手に郵送していたこともある。印刷して渡した紙が文書になる。控えは自社で持つだけにした。消費税そのものの端数の扱いはインボイスの端数処理の記事に書いた。
確認していないこと
第1号文書と第2号文書の税額の段階は、一部しか確認していない。1万円未満が非課税で、第2号なら1万円以上100万円以下が200円、100万円超200万円以下が400円というところまでだ。建設工事の請負契約には軽減措置があると聞いているが、条件は確認していない。
第7号文書の継続的取引の基本となる契約書は4千円という記載を見たが、どの契約が当たるかは確認していない。
クレジットカード払いの受取書の扱いも、今回読んだページには記載がなかった。信用取引なので金銭の受取書に当たらないという話を聞くが、条文で確かめていない。
印紙を貼り忘れたときや、多く貼ったときの手続きも扱っていない。過怠税の話と還付の話は別にある。
電子で作った書類の保存の要件は電子取引データの記事に書いた。印紙が要らなくなる代わりに、保存の要件は増える。
出典(2026年9月21日確認): 国税庁のタックスアンサー No.7124 消費税額等が区分記載された契約書等の記載金額、No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書、No.7141 印紙税額の一覧表(その2)、No.7140 印紙税額の一覧表(その1)、質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」および「変更契約書に電磁的記録(電子契約)を引用する旨の記載がある場合」。



