残業の割増は8時間超だけではない。週40時間と月60時間をExcelで二重に数えずに出す

2026-09-20シフト・勤怠

残業の割増を1日8時間超だけで数えていると足りない。週40時間を超えた分にも割増が要るし、月60時間を超えた分は率が上がる。

ただ、この3つを単純に足すと今度は多すぎる。ある月の勤怠で試したら、正しい29.5時間に対して45.0時間になった。15.5時間の差だ。二重に数えない出し方を式にした。

以下の割増率は、2026年9月20日に厚生労働省の「確かめよう労働条件」の時間外・休日労働と割増賃金のページで確かめた。計算はMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で行った。勤怠のデータは式を確かめるために作った架空のものだ。個別の判断は就業規則と社会保険労務士に確認してほしい。

割増率は3つの軸で決まる

厚生労働省のページには、労働時間の長さは週40時間、特例措置事業場では44時間以内、1日8時間以内に制限されていると書かれている。この枠を超えた分が時間外労働になる。

率は3つある。時間外と深夜が25%以上、法定休日が35%以上。そして1か月に60時間を超える時間外労働の割増率は50%以上に上がる。中小企業にもこの50%が適用されるようになったのは2023年4月1日からだ。

深夜は午後10時から午前5時までを指す。時間外と深夜が重なったときは足す。厚生労働省の例示でも、法定時間内の残業と深夜が重なる部分を1.25と0.25の合計である1.50で計算している。

1日8時間超と週40時間超を足すと、15.5時間多く出る

やりがちな計算はこうだ。日ごとに8時間を超えた分を足す。それとは別に、週の実働の合計から40時間を引いた分も足す。

架空の1か月で両方を計算した。日ごとの8時間超の合計は23.5時間。週の実働から40時間を引いた分の合計は21.5時間。足すと45.0時間になる。

正しく計算すると29.5時間だった。15.5時間が二重に入っている。

理由は単純で、1日9時間働いた日の9時間目は、日の8時間超としてすでに時間外に数えられている。その9時間目は週の実働の合計にも入っているので、週の合計から40を引くときにもう一度数えられる。同じ1時間を2回数えている。

週40時間超は、法定内の合計から出す

二重を避けるには、日の8時間超を先に抜いてから週を見る。

日ごとに2つの列を作る。日の法定外と、残りの法定内だ。

日の法定外: =MAX(0,実働-8)
法定内:     =実働-日の法定外

そのうえで、週ごとに法定内だけを合計して、40時間を超えた分を出す。

週の法定内の合計: =SUMIF($週番号,$当該週,$法定内)
週40時間超:       =MAX(0,その合計-40)

週番号は=WEEKNUM(日付,2)で出る。第2引数の2が月曜起算だ。就業規則で日曜起算にしているなら1を使う。ここを合わせないと、土曜に出た分の扱いが1週ずれる。

架空の月を週ごとに並べるとこうなった。

法定内の合計 週40時間超 日の8時間超
第36週 32.00 0.00 4.00
第37週 43.00 3.00 5.50
第38週 38.00 0.00 8.00
第39週 43.00 3.00 4.00
第40週 22.00 0.00 2.00

日の8時間超が23.5時間、週40時間超が6.0時間。合わせて29.5時間が、この月の時間外労働になる。

第37週と第39週で3時間ずつ出ているのは、土曜に半日出た週だ。平日はどの日も8時間を超えていないのに、週の合計で40時間を超えている。1日ごとの表を見ているだけでは、この3時間は見つからない。

深夜は別の軸なので、重ねて数える

深夜は時間外と別の軸だ。午後10時から午前5時に働いた時間は、時間外かどうかと関係なく25%が付く。だから、時間外の集計から深夜を引いてはいけない。

深夜の時間は2つの窓の重なりで出す。

=MAX(0,MIN(退勤,29/24)-MAX(出勤,22/24))*24

22/24が午後10時、29/24が翌日の午前5時にあたる。日をまたぐ勤務の扱いは日またぎの勤務時間の記事に詳しく書いた。

架空の月では深夜が4.5時間だった。この4.5時間は時間外の29.5時間にも含まれている可能性がある。含まれている分は1.25と0.25を足した1.50倍になる。二重に払うのではなく、率を足す。

月60時間を超えた分だけ50%にする

月の時間外が60時間を超えたら、超えた分の率が上がる。超えた分だけで、全部ではない。

60時間以下の分: =MIN(時間外の合計,60)
60時間を超えた分: =MAX(0,時間外の合計-60)

繁忙月を想定して、平日を午前9時から午後9時、土曜を午前9時から午後5時にした月で計算した。日の8時間超が66.0時間、週40時間超が21.0時間で、時間外の合計は87.0時間。60時間を超えた分は27.0時間になる。

時給1,500円で割増分を出すと、60時間以下の60時間に25%、超えた27時間に50%で42,750円。全部を25%で計算すると32,625円だ。差は10,125円になる。

87時間という数字だけ見て一律25%で処理すると、1人あたり1万円が足りない。月末に時間外の合計を出す列を1つ作って、60を超えていないかだけ見る習慣にしておく。

土曜が法定休日かどうかで、3,000円変わる

週休2日の職場では、2日のうちどちらが法定休日かを就業規則で決めている。決めていないと、この計算ができない。

法定休日の労働は35%で、時間外とは別の枠になる。週40時間の集計にも入らない。だから、同じ勤務表でも扱いが変わる。

上の架空の月で、土曜を所定休日とした場合と法定休日とした場合の両方を計算した。集計から法定休日を外すには、SUMIFSに条件を足す。

=SUMIFS($法定内,$週番号,当該週,$法定休日の列,"")

土曜が所定休日なら、土曜の勤務も週40時間の枠に入る。時間外は29.5時間。時給1,500円の割増分は11,063円になる。

土曜を法定休日にすると、その10時間が枠から外れる。週40時間超は0になり、時間外は23.5時間に減る。代わりに10時間が35%の法定休日労働になる。割増分は14,063円だ。

同じ勤務表で3,000円の差が出た。減った時間外より、35%が付く10時間のほうが重い。どちらが正しいかは就業規則が決めることで、こちらで選ぶものではない。まず規程を確認して、勤怠の表に法定休日の列を作る。

月末に見る4つの数字

毎月確かめるのは4つだけにした。どれも表の下に1行ずつ置いておけば出る。

1つ目は時間外の合計だ。日の8時間超と、週40時間超を足したもの。2つ目は、その合計が60を超えていないか。3つ目は深夜の合計。4つ目は法定休日に働いた時間だ。

この4つが出ていれば、給与のソフトに入れる数字がそろう。逆に、実働の合計だけを見ていると、どれも出てこない。

踏んだ失敗

日の8時間超と、週の合計から40を引いた分を足していた時期がある。上の月の数字でいえば45.0時間と出ていた。本来は29.5時間だ。多く払う方向なので指摘は受けなかったが、予算の見込みがずれ続けた。この記事の計算を組んで気づいた。

土曜に6時間だけ出た週を、残業ゼロと思い込んでいたこともある。平日はどの日も8時間ちょうどで、その通り表には何も出ていなかった。週の合計は43時間で、3時間の時間外が発生していた。日の行だけ見ていると出てこない。

深夜の時間を時間外から引いていたこともある。二重に払うのを避けるつもりだった。実際は軸が違うので、引くのではなく率を足す。深夜だけ働いて時間外にならない日もあるので、列は別に持つ。

週の起算を直し忘れた月もある。就業規則は日曜起算なのに、WEEKNUMの第2引数を2のままにしていた。土曜の勤務が前の週に入り、40時間超の出方が変わった。引数は最初に確認する。

確認していないこと

法定休日に働いた時間が、月60時間の算定に入るかどうかは、今回読んだページでは明確に書かれていなかった。法定休日は35%で別枠という理解で計算しているが、確定した扱いは所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確認してほしい。

60時間を超えた分の割増の代わりに休暇を与える仕組みがあると聞いているが、条件は確認していない。

変形労働時間制とフレックスタイム制は扱っていない。どちらも週40時間の見方が変わるので、上の式はそのままでは使えない。日ごとの集計までは勤怠管理表のテンプレートの形で足りるが、週と月の集計はここで足した列が要る。

時給そのものの決まり方も別の話になる。最低賃金と比べるときは手当を外して時間額に直す必要があり、そちらは最低賃金が上がったときの記事に書いた。

出典(2026年9月20日確認): 厚生労働省「確かめよう労働条件」の時間外・休日労働と割増賃金、厚生労働省「中小企業の事業主の皆さまへ 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」。

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