退職の連絡を受けたら、期限の違う3つの手続きが同時に走り出す。社会保険の資格喪失届が5日以内、雇用保険の資格喪失届と離職証明書が10日以内、源泉徴収票の交付が退職の日以後1か月以内だ。
いちばん短いのが5日なので、退職日を聞いたその場で3つの期限をカレンダーに入れる。あとは順番に片づければ間に合う。
以下の期限は、2026年9月20日に日本年金機構、厚生労働省、国税庁のページで確かめた。日付の計算はMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で行った。個別の判断は所轄の年金事務所、ハローワーク、税務署に確認してほしい。
3つの期限と、その出どころ
| 手続き | 期限 | 出どころ |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険の資格喪失届 | 事実発生から5日以内 | 日本年金機構 |
| 雇用保険の資格喪失届と離職証明書 | 被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内 | 厚生労働省 |
| 給与所得の源泉徴収票の交付 | 退職の日以後1か月以内 | 国税庁 |
源泉徴収票は、年末に全員へ配るものとは別扱いになる。国税庁のページには、翌年1月31日まで、ただし年の中途で退職した人は退職の日以後1か月以内、と書かれている。年末調整の時期を待ってはいけない。
退職金を払った場合は、退職所得の源泉徴収票を退職後1か月以内に税務署と市区町村へ提出する。税務署へ出す分は、その年に退職した人をまとめて翌年1月31日までに出しても差し支えない、とも書かれている。
退職日から3つの期限を出す
退職日をB1に入れて、それぞれの期限を式で出す。
資格喪失日: =B1+1
社会保険の期限: =B1+5
雇用保険の期限: =B1+2+9
源泉徴収票の期限: =EDATE(B1,1)
雇用保険の起算が少しややこしい。被保険者でなくなった日が退職日の翌日で、そこから起算して10日以内なので、退職日の2日後を1日目として数える。2026年10月15日に退職した人なら10月26日が期限になる。
EDATEは1か月後の同じ日を返す関数だ。1月31日に退職した人なら2月28日というように、月末の処理も任せられる。
2026年10月15日の木曜に退職した例で計算させた結果がこれだ。
| 手続き | 期限 | 曜日 |
|---|---|---|
| 社会保険の資格喪失届 | 10月20日 | 火 |
| 雇用保険の資格喪失届と離職証明書 | 10月26日 | 月 |
| 源泉徴収票の交付 | 11月15日 | 日 |
期限が日曜に当たったら、金曜に出す
3つ目の11月15日は日曜だった。窓口は開いていない。
祝日の一覧を持たせておけば、その前の営業日を式で出せる。
=WORKDAY(期限+1,-1,祝日!$A$1:$A$100)
この式で11月13日の金曜が返った。実際に動ける最終日はここになる。祝日の一覧の作り方は祝日を判定する記事に書いた。内閣府のCSVをそのまま使える。
期限が土日祝に当たったとき、法律上いつまで延びるかは手続きごとに定めがある。ただ、実務としては前の営業日に出しておけば迷わない。私は期限そのものではなく、この「出せる最終日」の列を見て動いている。
12月31日に退職すると、期限が1月29日になる
月末退職でも計算してみた。
| 退職日 | 源泉徴収票の期限 | 窓口に出せる最終日 |
|---|---|---|
| 2026年10月31日 | 11月30日(月) | 11月30日(月) |
| 2026年12月31日 | 1月31日(日) | 1月29日(金) |
| 2027年3月31日 | 4月30日(金) | 4月30日(金) |
12月31日の退職がいちばん危ない。期限の1月31日が日曜で、しかも年末年始をはさむ。作るのは年明けの出社日からになるので、実質の作業日数が短い。年末に退職者が出たら、その年のうちに源泉徴収票を作っておく。
資格喪失日は退職日の翌日
日本年金機構のページには、退職の場合は退職日の翌日が資格喪失年月日になると書かれている。3月31日退職なら4月1日だ。
ここを間違えると保険料の月がずれる。3月31日退職なら3月分まで、4月1日退職なら4月分まで。1日違いで1か月分の保険料が変わる。退職日を月末にするか月末の前日にするかで金額が動くので、本人から相談されることがある。
社会保険の対象になるかどうかの要件そのものは、2026年10月から変わる。週20時間で働く人の扱いは社会保険の賃金要件が外れる記事に書いた。
連絡を受けたその日に聞くこと
期限の計算に要る情報は、最初の面談で全部そろう。後から聞き直すと手続きが止まる。
聞くのは、退職日、最終出社日、離職票が要るかどうか、退職後の連絡先の住所、健康保険を任意継続するかどうか。この5つだ。
退職日と最終出社日は別物になることが多い。有給を消化すると、最終出社日の2週間後が退職日というような形になる。期限の起点は退職日のほうなので、両方を記録する。
連絡先の住所は、源泉徴収票と離職票を送る先になる。引っ越しの予定があるなら、いつからどこかまで聞く。ここを聞き漏らすと、書類が戻ってきて手続きがやり直しになる。
退職日を1日ずらすと、保険料が1か月分変わる
資格喪失日が退職日の翌日になるので、月末に退職するかその前日に退職するかで、保険料を負担する月が変わる。
3月31日に退職すると資格喪失日は4月1日で、3月分の保険料がかかる。3月30日に退職すると資格喪失日は3月31日なので、3月分はかからない。
金額にすると小さくない。標準報酬月額が28万円の人なら、厚生年金の本人負担は9.15%で約25,620円。健康保険と合わせると4万円前後になる。会社も同じだけ負担しているので、両方で8万円前後が動く。
ただし、3月30日退職にすると3月分の年金記録が1か月減り、国民健康保険か次の勤め先の保険に自分で入ることになる。得か損かは本人の事情で変わるので、こちらから勧めない。数字だけ示して本人に決めてもらう。私は相談されたときに、この計算を紙に書いて渡している。
回収するものと、渡すもの
社会保険の資格喪失届には、交付されている証類の回収が要る。日本年金機構のページには、資格確認書、高齢受給者証、特定疾病療養受療証、限度額適用認定証が挙げられている。紛失しているときは回収不能届を添える。
雇用保険の離職証明書には、添付書類が要る。厚生労働省の一覧には、出勤簿やタイムカード、賃金台帳、労働者名簿、離職の理由を確認できる書類が挙げられている。離職前2年間分を求められることがあるので、退職の連絡を受けた時点で用意を始める。
渡すものは源泉徴収票と、離職票だ。離職票はハローワークから事業主に届き、それを本人に渡す。本人が失業給付の手続きをするまでの時間に直結するので、届いたらすぐ送る。
踏んだ失敗
源泉徴収票を年末まで作らなかったことがある。10月に辞めた人から12月に電話が来て、転職先の年末調整に間に合わないと言われた。退職の日以後1か月以内という定めを知らなかった。
賃金台帳の準備を後回しにして、離職証明書の10日に間に合わなかったこともある。2年分をそろえるのに半日かかった。今は退職の連絡を受けた日に、その人の賃金台帳を印刷して1つの封筒にまとめている。
保険証の回収を忘れて、退職者に電話をかけたこともある。最終出社日に回収する、と決めておけば起きない。最終出社日のチェックリストを作った。作り方は月次の締めの記事と同じで、期限を第何営業日ではなく退職日からの日数で持たせる。
確認していないこと
住民税の特別徴収に係る給与所得者異動届出書の期限は、今回は確認していない。市区町村ごとに案内が出ているので、事業所のある自治体のページで確かめてほしい。
社会保険の5日以内について、起算日が退職日なのか資格喪失日なのかは、年金機構のページの「事実発生から5日以内」という記載だけでは読み切れなかった。上の表では退職日を起点にして計算している。1日早い側なので、これで動けば遅れることはない。
期限が土日祝に当たったときに法律上どこまで延びるかも、手続きごとに確認していない。前の営業日に出す運用にしていれば、この判断は要らない。
出典(すべて2026年9月20日確認): 日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」、厚生労働省「雇用保険の手続き一覧表」、国税庁「給与所得の源泉徴収票等の交付義務」および「退職所得の源泉徴収票の提出範囲と提出枚数等」。



