プログラムを書けなくても使える、という話はよく見る。では具体的に何ができるのか。事務でよくある5つの作業を実際にやらせて、結果と時間を測った。
処理そのものは、どれも1秒かからなかった。時間がかかるのは、何を作れば正解かを決めて、それを言葉にするところだ。
以下の時間と件数は、2026年9月21日に自分の端末で実行して測った実測値だ。集計の結果はMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で開いて確かめた。手作業でやった場合の時間は見積もりで、実測ではない。
12支店の月報から、数字を集める
支店ごとに同じ書式のExcelがあり、同じセルに売上と件数が入っている。これを1枚にまとめる作業だ。
12ファイルを作って、集めるところまで走らせた。集める処理は0.15秒で終わった。できた表には支店名と売上と件数が12行並び、最後に合計の行が入っている。
Excelで開いて確かめたら、売上の合計が32,556,000円、件数の合計が1,034件と出ていた。合計はSUMの式で入っているので、あとから1行足しても追随する。
手でやるなら、1ファイル開いて2つのセルを写して閉じる。1ファイル30秒として6分ほどだろう。月に1回なら耐えられるが、支店が50あると25分になる。
この作業が向いているのは、確かめ方が式で決まるからだ。合計が元のファイルの合計と一致するかを見れば済む。任せていい作業の切り分けはAIに任せる判断の記事に書いた。
200件のファイル名を規則で直す
スキャンしたPDFがscan000.pdfからscan199.pdfまで並んでいる状態を作って、日付と連番と書類名の形に直させた。
scan000.pdf → 20260930_1000_請求書.pdf
scan199.pdf → 20260930_1199_請求書.pdf
200件の処理は0.04秒だった。手でやると1件10秒としても33分かかる。しかも途中で集中が切れて、番号を飛ばす。
規則を先に決めるのが要点になる。日付を8桁で先頭に置くか、末尾に置くか。連番を何桁にするか。この2つを決めてから頼む。決めずに頼むと、それらしい形で返ってきて、あとで並び順が想定と違うことに気づく。
文字化けしたCSVを直す
取引先から届いたCSVを開いたら文字化けしていた、という場面だ。原因は文字コードが違うことが多い。
500行のCSVをcp932で書き出して、それをUTF-8として読むとどうなるかを試した。先頭はこう出た。
����,����
�R�c0,������
これが文字化けの正体だ。変換そのものは0.012秒で終わる。cp932として読み込み、UTF-8で書き直すだけだ。
Excelで開くときに文字化けさせないためには、UTF-8にBOMを付けて保存する。BOMがないと、ExcelはUTF-8だと判断してくれないことがある。ここは自分で指定する必要があるので、頼むときに書いておく。
2つの名簿を突き合わせる
去年の名簿と今年の名簿を比べて、片方にしかない人を出す作業だ。
480件と485件の名簿で試した。片方にしかないものが20件と25件出た。処理は0.0001秒未満で、時間を測る意味がない。
これはExcelのCOUNTIFでもできる。件数が数百なら表計算のほうが早いこともある。ファイルが何十個もある、フォルダをまたぐ、といった条件が付いたときに差が出る。
60件を月ごとのフォルダに振り分ける
もう1つ試した。ファイル名の先頭に日付が入った書類を、月ごとのフォルダに分ける作業だ。
60件を振り分けさせたら0.033秒で終わり、12個のフォルダができた。2026-01が2件、2026-02が9件というように分かれ、合計は60件で合った。振り分けられなかったファイルは0件だ。
ここで大事なのは最後の数字になる。規則に合わない名前のファイルがあったとき、勝手にどこかへ入れるのではなく、残して件数を出させる。頼むときに1行足す。
・規則に合わない名前のファイルは動かさず、一覧で出す
これがないと、想定外の名前のものが1つのフォルダにまとめて放り込まれる。あとから探すことになる。振り分けたあとで合計が合わないときも、この一覧を見れば原因が分かる。
電子取引のデータを保存するフォルダを作るときも同じ形になる。日付と取引先と金額をファイル名に入れておけば、あとから月で分けられる。
最初に触るときは、コピーを作ったフォルダで
始め方で迷うなら、順番はこうなる。
机の上に、練習用のフォルダを1つ作る。そこに、本物のファイルのコピーを入れる。元のフォルダは開かない。
その練習用のフォルダで起動する。書き込める範囲が起動した場所の下に限られるので、これだけで事故の範囲が決まる。
最初にやらせるのは、フォルダの中のファイル一覧を作るような、何も壊さない作業がいい。出てきたものを見て、指示の書き方の感じをつかむ。
うまくいく形が分かってから、本物のフォルダに移る。その段階でも、元のファイルは読むだけという指定は外さない。
時間がかかるのは、処理ではない
5つとも処理は1秒かからなかった。合計しても0.24秒だ。それなのに、実際にやると30分かかることがある。
かかっているのは、何を作れば正解かを決める時間だ。集計の表にどの列を入れるか、ファイル名の連番を何桁にするか、文字コードをどちらに寄せるか。これを決めないまま頼むと、出てきたものを見てから考えることになり、やり直しが増える。
仕組みとしては単純で、手でやると繰り返しになる操作を、一度の手順として書き出して走らせているだけだ。書き出す先がプログラムなだけで、こちらが出す指示は日本語で足りる。ただし、正解の形を決めるのは人の側にしか置けない。ここを渡そうとすると、それらしいものが返ってきて確認が増える。
頼むときに書く4行
型にすると短い。
・やること: 月報のフォルダにある全部のxlsxから、B2とD5とD6を集める
・出すもの: 集計.xlsxを新しく作る。列は支店、売上、件数。最後に合計の行
・触らないもの: 元のファイルは読むだけ。書き換えない
・確かめ方: 売上の合計が元の12ファイルの合計と一致すること
4行目が効く。確かめ方を先に書くと、こちらが検算できる形で出てくる。書かないと、正しそうに見えるが確かめられないものが返る。
3行目も外せない。元のファイルを直接書き換えられると、間違いに気づいたときに戻せない。コピーを作ってから触る、という指定を毎回入れる。
向かない作業
同じ基準で判断すると、向かないものもはっきりする。
その場の事情で判断が変わる作業は向かない。この取引先にはこの書き方をする、という類の知識は、こちらの頭の中にしかない。
確かめ方が「読んでみて違和感がないか」になる作業も向かない。確認に元の作業と同じ時間がかかる。
一度しかやらない作業も、規則を決める手間のほうが大きくなることがある。10件のファイル名を直すだけなら、手で直したほうが早い。200件を超えたあたりから逆転する。
踏んだ失敗
出力の形を決めずに頼んで、欲しい列が入っていなかったことがある。支店名は入っていたが、支店コードが要るとは伝えていなかった。もう一度頼み直すより、最初に列を書いたほうが早い。
元のファイルを直接書き換えさせて、戻せなくなったこともある。バックアップを取る前に走らせた。今は、触らないものを指定する行を必ず入れている。
ファイル名の順で並ぶことを想定していなかったこともある。上の12支店の集計では、支店が五十音順ではなくファイル名の順に並んだ。並べ方の指定を書いていなかったからだ。出てきた表の1行目が京都になっていて、おかしいと思って気づいた。
作業の手順そのものを書き出す方法は業務マニュアルを下書きする記事に分けて書いた。手順が言葉になっていれば、頼み方もそのまま作れる。
確認していないこと
上の秒数は処理そのものにかかった時間で、頼み方を考える時間も、結果を確かめる時間も入っていない。実際の作業時間はこれより長い。
手作業でやった場合の6分や33分は見積もりで、実測していない。自分の速さで置き換えてほしい。
会社のファイルを扱うときに、どこまで触らせてよいかは別の話になる。範囲の決め方は会社のPCで使うときの記事に書いた。
上の5つはすべて自分で作ったファイルで試している。取引先から届いた実際のファイルは、書式の揺れや結合セルが入るので、そのままでは同じようにいかない。



