取引先の担当者から「先日の件、どうなりました」と電話が来た。2か月前の日報を開くと「取引先C対応中」とだけ書いてある。何を聞かれて、誰に確認して、どこで止まっていたのか、どれも書いていない。課長に聞き直して、半日かけて経緯を組み立て直した。日報は毎日15分かけて書いていたのに、いざ探すと何も残っていなかった。
そのあと作り直した日報の型が、この記事の中身だ。書くのは5分、探すのは1分。型を決めてから1年以上使っている。
日報の読者は上司と、2か月後の自分
日報が役に立たないのは、書く人の頭の順番で書いているからだ。今日やったことを時系列で並べると「請求書発行、電話対応、台帳更新」のような業務名の羅列になる。読む側はその順番では読まない。
上司が知りたいのは、今日の状態と、止まっていること。「4件問い合わせがあって、うち1件は課長の回答待ち」なら、次に自分が何をすればいいかが分かる。2か月後の自分が知りたいのは、誰に、いつ、何をしたか。「取引先Cの鈴木さんに、9月5日に、有効期限は9月末と回答した」なら、電話が来ても即答できる。
どちらにも効かないのが「対応中」「調整中」だ。これは状態ではなく、書いた本人の気分に近い。何を待っていて、いつまでに動くのかが抜けている。私の型は、この2つの読者に向けて枠を分けている。
5つの枠、10行以内
型はこれだ。1日分で10行を超えない。
■ 数字
問い合わせ4件(新規2)、請求書発行3社、電話応対6件
■ 起きたこと(相手・内容・した動作)
・取引先Cの鈴木さん: 見積の有効期限を聞かれた。課長に確認中
・取引先D: 住所変更の連絡あり。台帳は未更新
・給与担当の高橋さん: 8月分の勤怠を送付した
■ 止まっていること(誰待ち・期限)
・取引先Cへの回答: 課長待ち、9/4まで
・取引先Dの台帳更新: 自分、9/5まで
■ 明日の最初の1件
9:00 取引先Dの台帳を更新して、請求書の宛先を直す
■ 気づき(任意、1行)
見積の書式に有効期限の欄がない。欄を足す提案を課長に
書き方の決まりは4つ。相手は固有名詞で書く。「A社」と略すと、あとで検索したときに出てこない。日付を書く。「先週」は2か月後には意味を失う。行は動作で終える。「送付した」「確認中」「待ち」のどれかで終われば、状態が分かる。そして「対応中」は使わない。書きそうになったら、誰の何を待っているかに置き換える。
5分で終わる順番は、止まっていることから
上から順に書くと時間がかかる。私の順番は、止まっていること、明日の最初の1件、起きたこと、数字、気づきだ。
止まっていることを最初に書くのは、これが上司にも自分にも一番要る情報で、書き忘れると翌日の朝に困るから。明日の1件は、今日の頭で決めておけば、翌朝に考え直さなくて済む。起きたことは、記憶ではなく送信済みメールと電話メモから写す。数字は最後にメールの件数を数える。気づきは時間がなければ書かない。
型にする前は15分以上かかっていた。今は5分から7分で終わる。短くなったのは書く量が減ったからではなく、何を書くかを毎日考えなくなったからだ。
型ができる前に踏んだ失敗
気づきの欄を作った最初の週に、その日の感想を書き始めて20分かかった日があった。日報が日記になっていた。それ以来、気づきは1行まで、しかも任意にした。書かない日のほうが多い。
上司から毎回「で、今日は何件だった」と聞き返された時期もある。件数を書いていなかったからで、数字の枠を先頭に置いてから聞かれなくなった。上司は文章を読む前に数字を見る。
相手を「A社の人」と書いていた月は、2か月後に検索しても出てこなかった。同じ会社に担当者が3人いて、誰と話したかが分からない。固有名詞で書く決まりはここから来ている。
冒頭の「取引先C対応中」は、止まっていることの枠がなかったころの日報だ。誰待ちかを書く欄があれば、「課長待ち」の3文字で半日が浮いた。
Excelに1行ずつ残すと、2か月後に1分で探せる
日報の本文は上司に送るチャットやメールで消えていく。私は同じ内容を、Excelの1行にして残している。列は7つ。日付、区分、相手、内容、状態、期限、次の行動。1件が1行で、その日の「起きたこと」と「止まっていること」がそのまま行になる。
区分は「問い合わせ」「請求」「勤怠」「備品」のように自分の仕事に合わせて固定する。状態は「完了」か「待ち:課長」「待ち:自分」「待ち:先方」のように「待ち:誰」の形に統一する。ここを統一しておくと、式で数えられる。
2026年9月20日に、10行のサンプルを入れてMicrosoft 365のExcel(バージョン16)で確かめた式を置いておく。A列が日付、B列が区分、C列が相手、E列が状態、F列が期限。
9月の問い合わせ件数: =COUNTIFS(B:B,"問い合わせ",A:A,">="&DATE(2026,9,1),A:A,"<="&DATE(2026,9,30))
止まっている件数: =COUNTIF(E:E,"待ち*")
期限を過ぎた件数: =COUNTIFS(E:E,"待ち*",F:F,"<"&TODAY())
取引先Aに関わった行数: =COUNTIF(C:C,"*取引先A*")
サンプルでは、9月の問い合わせが4件、止まっているのが4件、9月6日時点で期限を過ぎているのが2件、取引先Aの行が2件と出て、手で数えた数と一致した。
Microsoft 365なら、止まっている行だけを別の場所に並べることもできる。=FILTER(A2:G200,LEFT(E2:E200,2)="待ち","なし") で、状態が「待ち」で始まる行が4行そのまま出た。期限の順に並べるなら =SORT(FILTER(A2:G200,LEFT(E2:E200,2)="待ち","なし"),6,1) で、9月4日、5日、8日、10月3日の順になった。Excel 2016や2019にはFILTERがないので、状態の列にオートフィルターをかけて「待ち」で絞る。やることは同じだ。
冒頭の「先日の件、どうなりました」は、この表があれば1分で答えられる。相手の列を名前で絞る式は =FILTER(A2:G200,ISNUMBER(SEARCH("鈴木",C2:C200)),"なし") で、サンプルでは9月2日の「見積の有効期限を確認された。課長に確認中」と、9月5日の「有効期限を9月末と回答」の2行が並んだ。聞かれたこと、誰に確認したか、いつ何と答えたかが、その2行に全部ある。FILTERがない版なら、相手の列で「鈴木」を検索するか、オートフィルターのテキストフィルターで「鈴木を含む」にする。
表記がそろっていないと、数え落とす
この表を2人以上で使うと、必ず表記がずれる。試しに、同僚が書いたつもりで「課長待ち」と「待ち:先方(コロンが全角)」の2行を足して数え直した。=COUNTIF(E:E,"待ち*") は5を返し、「課長待ち」を数え落とす。前方一致なので、頭が「待ち」で始まらない行は入らない。全角コロンの行は「待ち」で始まるので数えられるが、誰待ちかを取り出す式を組んだときに壊れる。=COUNTIF(E:E,"*待ち*") にすれば6になり、両方拾える。
私は式を広げるより、状態の列に入力規則のリストを付けて、「完了」「待ち:課長」「待ち:自分」「待ち:先方」「待ち:納品」の5つからしか選べないようにした。式を直すのは自分だけで済むが、書き方をそろえるのは書く人全員に効く。リストの外の状態が要るときは、リストに足してから使う。
月末は、区分ごとの件数を同じ式で出す。サンプルの9月は、問い合わせ4件、請求3件、勤怠1件、備品1件。COUNTIFSの区分の文字を変えるだけなので、4つの式をコピーして月報に貼れば、月報の数字は1分で埋まる。日報の数字の枠も、この表から拾えばいい。
先にExcelに入れて、日報はそこから作る
二重入力になりそうだが、順番を決めれば増えない。仕事の途中で、電話を切ったらExcelに1行入れる。夕方、状態が「待ち」の行をコピーして日報の「止まっていること」に貼り、今日の日付の行を「起きたこと」に貼る。日報の本文は、Excelの行からできている。
この表は、引き継ぎ書を書くときにも使う。「待ち」の行がそのまま未処理の一覧になり、「内容」の列から例外やトラブルが拾える。日報を型で書いておくと、引き継ぎ書の半分は書き終わっている。



